いろいろと気を配っていただいた船長はじめ乗組員のみなさん、同乗の児島常務、藤井次長、そして熱心に訪船指導に当たられた鈴木先生、古荘先生、大変ありがとうございました。本船の航海の安全をお祈りします(M)」
アドバイザーに聞く
Q どのような部分に重点をおいて訪船指導に当たっているのですか?
A 私は船に乗りますと、まず乗組員のトイレとゴミ箱を見るのです。これでその船の労務が大体分ります。
次に、船長、乗組員と話してみて、雰囲気を感じとることでみんながどの辺まで責任をもってやっているかが伺えます。きびきびしているとか、若々しさを感じとれるようだと、当直もきちんとやっている。何となく暗いとか、ワンマン船長にみんながビクビクしているような船ではダメです。

また、その会社や船で大きな改革、例えば社長が代わったとか、運航管理者が交代したとか、新船になったとかいったときに結構事故が起きているのです。
Q 作業基準は守られていると思いますか?
A 運航管理規定や作業基準を無視している船や会社は、ほとんどありません。
ところが、例えば避航操船の場合、避航して基準航路からずれたあと、元に戻す意思の有無をチェックすると、運航基準がきちょうめんに守られているかどうかがよくわかるのです。
基準動作をやりなさいとよくいうのですが、例えばウインドラスの動作で、確実にブレーキが入っているか、クラッチが入っているか確認して、一つ一つの作業ステップをちゃんとやっているかどうかです。
Q これはという大切な注意点を聞かせてください。
A それは「慣れと油断の違い」ということです。
毎航海、外からの情報が違うのに同じ動作では、油断になっているのです。今、自分は何をやっているのかを考えることが慣れの動作から油断に入らないカギです。
例えばホーサーワーク一つにしても、スタンバイでホーサーをただ置くだけでなく、どういう着け方をするからどの程度出しておかなければならない、ということを考えながら作業することです。
ミーティングでよくいうのですが、見張りの基本に忠実になってもらいたい。それには「ブリッヂでは肉眼による見張りが第一ですが、あらゆる手段の見張りが必要です。双眼鏡もある、気象サービスもある、VHFの情報もある」また「レーダーの性能がよくなったけれども、船の距離は、レーダーで先に見るのではなく、まず肉眼で見て、それをレーダーで確認する。そういう習慣をつけてほしいのです」
Q 今後の訪船指導のあり方について何かありますか?
A 最近のハイテク化、省力化、自動化に対応した知識を持った若い人が、アドバイザーに加わっていくことが重要です。
基本動作は、経験を積んだ人の意見が大変に重要です。したがって、若い人と経験豊富な人の組み合わせが、これからのアドバイザーのあり方の理想でしょう。

前ページ 目次へ 次ページ